今のご時世「ハラスメント」というものは、様々なメディアでも取り上げられていることもあり、多くの人が敏感になっていると思います。職場の労働環境も良くなっているところも多いですよね。
しかし私は、そんな今という時代に、普通にマタハラ・パワハラを受けました。それは私にとっては耐え難く、精神的に体調を崩し、休職したのち退職することになりました。現在も、心療内科に通院しメンタルケアを行っています。
看護師さんで、妊娠中・育休復帰後の働き方に悩んでいる人や、職場の人間関係に悩んでいる人、「これってハラスメント?」と疑問に思うことがある人などに向けて、私の体験談をお話ししたいと思います。
マタハラとは?
マタニティハラスメント(以下マタハラ)とは、正式には「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」と言います。厚生労働省は、マタハラとは「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されること、と定義しています。
マタハラの種類
マタハラはその内容によって2つに分類されます。「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」です。
制度等に利用への嫌がらせ型
「制度等の利用への嫌がらせ型」とは、次に掲げる制度又は措置(制度等)の利用に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。
男女雇用機会均等法が対象とする制度または措置 | 育児 ・ 介護休業法が対象とする制度または措置 |
①産前休業 ②妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置 (母性健康管理措置) ③軽易な業務への転換 ④変形労働時間制での法定労働時間を超える 労働時間の制限、時間外労働及び休日労働 の制限並びに深夜業の制限 ⑤育児時間 ⑥坑内業務の就業制限及び危険有害業務の就業制限 | ①育児休業 ②介護休業 ③子の看護休暇 ④介護休暇 ⑤所定外労働の制限 ⑥時間外労働の制限 ⑦深夜業の制限 ⑧育児のための所定労働時間の短縮措置 ⑨始業時刻変更等の措置 ⑩介護のための所定労働時間の短縮等の措置 ※⑧~⑩は就業規則にて措置が講じられていることが必要です |
具体例①解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
・産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた。
・時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われた。
具体例②制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの
・育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、利用することができない。
・育児休業について請求する旨を周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうすべき。」と言われた。さらに、再度伝えても継続的に同様の発言をされ、取得を諦めざるを得ない状況に追い込まれた。
具体例③制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの
・上司・同僚が「所定外労働の制限をしている人はたいした仕事はさせられない」と繰り返し又は継続的に言い、専ら雑務のみさせられる状況となっており、就業するうえで看過できない程度の支障が生じている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)。
・上司・同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返し又は継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)
状態への嫌がらせ型
「状態への嫌がらせ型」とは、 女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。
対象となる事由
①妊娠したこと
②出産したこと
③産後の就業制限の規定により就業できず、又は産後休業をしたこと。
④妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと。
※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。
⑤坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと又はこれらの業務に従事しなかったこと
具体例①解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
・上司に妊娠を報告したところ「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。
具体例②妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの
・上司・同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し又は継続的に言い、仕事をさせない状況となっており、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)。
・上司・同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し又は継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)
マタハラを受けたことがある人はどれくらいいるの?
令和5年度の厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「過去5年間に女性が妊娠・出産・育児休業等ハラスメントを受けた経験」の項目では、経験があると答えた人の割合は、およそ26.1%と報告されています。実に、4人に1人がマタハラを受けているということになります。この割合は、令和2年度に比べて横ばいで推移しています。一方で、セクハラやパワハラが年々減少傾向であることから、マタハラに対する意識の変化は薄いと言えそうです。
4人に1人もの働く妊婦さんがマタハラを受けているんだね。
継続的な嫌がらせや、制度を十分に利用できないことは立派なマタハラに該当するよ!
妊娠中にうけたマタハラ
当時の職場に入職して1か月ほどたった時に、第一子の妊娠が分かりました。施設で看護師をしていたので、夜勤や身体的負担の大きい業務等を免除してもらうために、妊娠6週の時に上司にのみ報告をしました。その後すぐに、その上司からマタハラを受けることとなりました。
実際に言われたこと・されたこと
- 「あなたはこれからみんなに迷惑をかけるんだからね」と言われる
- 私が拒否したにも関わらず、他の職員に妊娠を公表される(まだ心拍も確認していない時期)
- 夜勤は免除できるが、介護業務(早出・遅出)の免除はできないと言われる
→理由は、みんなと同じ給料をもらっているため、会社の規則的に不可能
→他の職員には、私の希望で介護業務を入れていると嘘をついていた
→介護業務の免除ができないという規則はそもそも存在しなかった - 利用者の中でも特に大変な人の入浴介助を一人でさせられる
- 毎日のようにリーダー業務をさせられる
- 「つわりはきもち」と言われる
- コロナにかかった利用者の担当をさせられる
- 体調不良で休むと、「迷惑」と何度も言われる
- 切迫で自宅安静となり、母健連絡カードを出したが、診断書以外は無効と言われ受理してもらえなかった
- 母健連絡カードで業務変更の申請をしたが、受理してもらえなかった
- 体型の変化を、「太ったね」「食べ過ぎじゃない?」などと言われ笑われた(職員)
- 入職したばかりなのに妊娠して育休も取るなんてありえないと言われる(職員)
覚えているもので、このようなものがありました。あたりも強く、毎日が苦痛でした。
切迫流産、早産になりましたが、原因はストレスでした。
妊娠中の正当な権利や制度を使えず、とても悔しかったです。
妊娠中にマタハラを受けたらできること
妊娠中のマタハラがひどく、とても仕事を続けられる状態ではありませんでした。
しかし、今退職してしまうと産休・育休がもらえない、という状況で、どうしたらよいのでしょうか。
方法は様々あると思いますが、私がとった行動を紹介します。
①産婦人科の先生に相談し、休職ができるよう診断書を書いてもらう
②診断書を会社に提出し休職手続きをする(窓口は人事部)
③診断書の期限が切れないよう、診断書を再提出する。
休職期間中は傷病手当を申請し傷病手当金を受け取る
④休職後、復帰せずにそのまま産休・育休に入る
まず、産婦人科の先生は全面的に味方です。休職したいと言えば、ほぼ確実に診断書を書いてもらえると思います。
母健連絡カードは、診断書と同じ効力を持つ正式な書類なので、それを提出しても問題ありません。
私の病院では、診断書の方が発行手数料が高かったですが、上司が理解していなかったので診断書を提出しました。
休職から産休・育休の手続きまで、全て人事部と直接やり取りしました。上司からのマタハラの件は、この時はまだ言っていなかったのですが、人事部の方はとても親切でしっかり対応してくれました。
上司とやり取りするのが無理な場合は、担当窓口の方に直接対応してもらう方がスムーズだと思います。
休職期間中は、傷病手当金を受け取ることができます。都道府県の協会けんぽに申請書を提出してください。
給料の約7割の手当金を受け取ることができます。
傷病手当金については以下の記事を参考にしてください。
ちなみに、休職期間は、その後の育休手当の算定期間には含まれません。
休んでしまうと、育休手当が下がるのではないかと思うかもしれませんが、心配しなくて大丈夫です。
これに関しては、以下の記事で詳しく書いていますので、参考にしてみてください。
妊娠中にマタハラを告発する?
マタハラを受けた時、告発を考える人もいると思います。会社には必ず、ハラスメント対応窓口が設置されているはずなので、もし会社に相談したい場合は、その担当の方にするといいでしょう。
私の場合は、妊娠中は告発しませんでした。理由は、2つあります。
①立場が弱く、退職させられる可能性があったため
②他のスタッフにも、全面的に味方になって一緒に戦ってくれるひとがいなかったため
いろいろ調べて、休職できることや妊娠を理由とした解雇はできないことを知り、働きながら告発をして上司とたたかうよりも、休職して穏やかに妊娠生活を送りたいと思ったからです。
また、当時は入職して日が浅かったこともあり、信頼できる同僚や先輩も少なく、1人でたたかうのは厳しいと判断しました。
育休復帰後のパワハラ
正直、職場復帰するかどうかはかなり悩みました。当時から上司は変わっていなくて、多くのスタッフは辞めて入れ替わっていたからです。
しかし、1歳前後の子どもを連れて転職活動し、新しい職場で新しく業務を覚えることに恐怖を感じて一度復帰することに決めました。
そして、復帰したことを激しく後悔しました。
実際に言われたこと・されたこと
- 子どもの熱で欠勤した時、電話連絡の際に、ため息や嫌味を言われる(毎回)
- 子どもが感染症にかかったり、入院になったとき、「本当に病気?診断書出して」と言われる
- 欠勤や早退が多いという理由で呼び出され、叱責をうける(何度も、必要以上に)
- 病児保育に預けるよう強制される
- 勤務日数の変更を相談した際に、退職をうながすような発言をされる
(子どもがかわいそう、変更して欠勤が減るのか?などと言われる) - 早退する時や、欠勤後出勤した時に、職員から嫌味を言われる
- 施設内で起こったインシデントやミスを自分のせいにさせられる(職員)
- 事実無根の噂を流される(職員)
復帰しても、当たり前にパワハラがありました。子どもの体調不良での欠勤もあったので、他のスタッフから嫌味や悪口もたくさん聞き、非常に働きづらかったです。それでも、子どものためにと我慢して働きましたが、我慢しすぎたのか心身ともに体調を崩し仕事に行くことができなくなりました。
復帰後に、会社に妊娠中のマタハラや復帰してからのパワハラを告発しました。
結果、当時の上司は異動することになり新しい上司に変わりましたが、それでもパワハラはなくなりませんでした。
ハラスメントが原因で退職する時に気を付けること
復帰後、日々続くパワハラで精神的に疲れていましたが、ある日、いつものように上司に呼び出されて意味不明なことを言われた次の日から仕事に行くことができなくなりました。体調がおかしかったのは薄々感じていましたが、その時にはもう手遅れで、自分にも家族にもどうすることもできず、心療内科を受診しました。
心療内科の先生と話をして、休職することになりました。退職するか迷いましたが、一度休職をすることで、その後退職しても、継続して傷病手当金を受け取ることができるということを知ったからです。
一部条件はあるのですが、医師の診断があれば、退職後も傷病手当金は受給できます。
パワハラを受けて、今すぐに辞めたいと思うと思いますが、休職をするメリットもあるので、よく考えてから判断することをおすすめします。
また、ハラスメントを受けたことによって、自分が思っている以上に心に傷を負っています。
精神状態が戻らず、働けなくなるどころか、日常生活もままならない状態になることもあります。
そうなる前に、その環境から抜け出してほしいと思います。
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